第12章 ピスタチオ fromショコラ
俺はカバンからゲーム機を取り出して電源を入れた。
「大丈夫なの?なんか最近しょんぼりしてっけど?」
潤が俺の隣に座って、文庫本を開きながら話しかけてきた。
目は本に向けたままだ。
メガネを掛けて、大野さんの作ったハットを被ってる。
…いいな…あんなに頑張って大野さんが作ったハット…
俺だって銅のカップ作ってもらったけどさ…
あのハット作ってたときの大野さん、すっごく嬉しそうだったし。
カップ作ってた時はあんなヘンな顔してさ。
「…ニノ?」
潤が怪訝な顔をして目を上げた。
「え?」
「どうした?大丈夫か?」
「なにが?」
「体調でも悪いの?」
そう言って本をテーブルに置いて、俺に手を伸ばしてきた。
額に手を当てると、ため息を付いた。
「熱、ある」
「えっ?」
「どうした?珍しいな…」
そう言ってごそごそとカバンを探ると、体温計を出してきた。
「ほい、熱測れ」
「…わかったよぉ…」
そう言われれば身体がだるい。
最近、よく眠れないからだ。
だから行長先生のおうちに行った時は、久しぶりに熟睡して随分身体が軽くなった。
でもそれから今日まで、やっぱりよく眠れない。
寝ようとすると、大野さんの顔がちらつく。