第12章 ピスタチオ fromショコラ
あの時…
みんなで八王子の御陵ってとこに行った時。
俺はあの犬に身体を乗っ取られて、なんと大野さんにキスをした。
なんか記憶あるんだよね…ソレ…
それ以降、取り憑かれてるとき意識があるし…
そのキス…ディープなやつをかましちゃった。
今思い出しても赤面する。
それがなんでそうなったかなんてちっともわからないし、犬が自主的にやったんだと思いこんでたけど、後から聞いたら犬が好きなのは翔ちゃんらしいし…
なんで…なんで大野さんにあんなことしちゃったんだろ…
飛びついて大野さんの匂いを嗅いでるうちに、なんか嬉しくなってきちゃって…
口を舐めてたら甘くて、柔らかくて…
で、思わず…舌、入れちゃったんだよね…
…犬は、ディープキスなんかしないよね…
あの日、家に帰ってから、胸のあたりがおかしかった。
思い当たることと言えば、ひとつだった。
大野さんのこと。
その気持ちに気づいた瞬間、もうどうしようもなくいたたまれなくなった。
だって、大野さんも俺も男。
しかも俺もあの人も、相当の女好きだし。
女が居ないと生きていけないとまで思ってる。
若い頃なんて、何人と寝たかとか結構えげつない競争とかしてたくらいだし…
なんで…?
なんでこんな事になるの?
もう出会って20年経つんですよ…
なんで今さらこんな気持ちにならなきゃならないんだよ…