第10章 だいだい
髪をさらさらと指で梳かれる感覚で意識が浮上してくる。
温かい手…
翔の香り…
しあわせすぎて、頬が緩む。
「和也…?起きたの?」
翔の手が俺の頬を包んだから、まだ寝たふりをする。
「起きてるんだろ…?」
つんつんと頬を突かれて、それでもまだ寝たふりをしていたら、鼻の穴に指が突っ込まれた。
「む…」
「あ、起きた?」
鼻に指を入れられたままリビングの時計をみたら、一時間ほど寝たようだった。
「おはよう、和也」
「おはよう…だーりん」
「んえっ!?」
「だーりん♡」
「進化…したな…」
「むふ…」
翔さんはごほっと咳払いすると、俺の顔をじっと見た。
「は…は…塙保己一」
「へ?」
「いや、なんでもない…」
「だーりん?」
「ぬお…」
がしがしと前髪を掻くと、また俺の顔を見た。
「は…はにー?」
「いやあんっ…嬉しいっ…」
がしっと抱きついて翔さんのほっぺにいっぱいちゅーをした。
「ちょっ…もうっ…」
笑いながら翔も俺のほっぺにたくさんちゅーしてくれた。
「かわいいんだから…」
「だーりんのほうがかわいいよ」
「ぜーったい、はにーのほうがかわいいからな」
「ちがうもーん」