第10章 だいだい
暫くそうやって抱き合っていた。
翔さんの身体の熱が、身体に沁みる。
こうやって翔さんの熱を感じられるのは、世界でただ一人。
俺だけなんだと思うと、嬉しくて叫びだしそうだった。
「翔さん…好き…」
「翔って呼べよ」
「え…」
「俺も和也って呼ぶから、おまえも翔って呼べよ」
「う、うん…しょ、翔?」
「ん…いい子…」
そう言ってまたふんわりと抱きしめてくれた。
胸がきゅんきゅんして、暫くなにも喋れない。
どうしよう…
俺、こんなに翔のこと好きなんだ…
「和也…」
「ん…」
翔が身体を離して俺のことじっと見た。
「かわいいな…おまえ」
「かわいくなんかないよ…捻くれてるし…」
「今のおまえは素直だよ。食べちゃいたいくらいかわいい」
「やだ…そんなこと言わないで…」
「食べさせろよ…」
そういって俺の耳をかぷっと噛んだ。
「あっ…ほんとに食べるの?」
「和也のミミガー美味しい」
「俺、ぶたじゃねえよ?」
「物のたとえだ」
真面目な顔をして言うからぶーっと噴き出した。
「なんだよー笑うなよ…」
そう言って頭をぽりぽり掻いている翔は、すごく可愛かった。
俺よりも、何倍もかわいい!