第10章 だいだい
「ヘンなこと?何が?」
「俺、男だし!だから…その…」
「なんだよ…」
「キスするとか言うなよ!」
もう泣きそうだ。
なんでこんなこと…
「もう何年一緒にやってんだよ…今更やめてくれよ…」
「今更じゃなかったら、よかったわけ?」
「ちがう…そういうこと言ってるんじゃなくて…」
「ずっと避け続けてたの、おまえだろ」
「ちがう…」
「俺はずっとおまえのこと…」
「ちがうっ…それ、ヘンだから!オカシイから!」
逃げたいのに足が動かない。
翔さんの顔も見ることができないのに…
ぐいっと肩を掴まれて、翔さんの方を向かされた。
「なあ…いい加減、正直にならないか?ニノ…」
「なにがだよ…」
「俺の気持ちはずっと変わってないよ…おまえが…」
「やめてくれよ!やめろよっ」
掴まれた肩の手を振りほどく。
「き…気持ち悪い…男同士なんか…」
最後まで言わせたくなくて…
思ってもないことを言うしかなかった。
それを認めることは絶対にできなかったから。
なんで今の立ち位置で居させてくれないの…
そばにいるだけで…充分なのに…
「ニノ…こっち見ろよ」
また手が伸びてきて俺の身体は囚われてしまう。