第10章 だいだい
喋ってる間に、どんどん壁際に追い込まれていく。
最終的には壁に身体を押し付けるところまで来てしまった。
「それ、だけ…なんだけど…」
「へえ」
さっきから”へえ”しか言ってない…
「俺のこと忘れるくらい楽しかったんだ」
「い、いやそれは…」
ドンっと顔の横に衝撃が走った。
翔さんが俺に壁ドンしてる…
「俺のことより、あんな女子高生が大事なの?」
「そ…そういうんじゃないって…」
顔を逸らそうとしたけど、顎をがしっと手で掴まれて翔さんの顔を見るしかなかった。
「なんで俺のこと忘れるの?」
「だから、ごめんって…」
だんだん翔さんの顔が近づいてくる。
耐えられなくなって目を閉じた。
ふっと笑う気配がしたと思ったら、顎を持ってた手をぐいっと上げられた。
「目、閉じてもいいの?」
「…え…?」
指でゆっくりと唇をなぞられた。
「あっ…」
「キス、しちゃうよ?」
咄嗟にしゃがんだ。
翔さんの手から逃れるように脱衣場を飛び出した。
リビングでソファの背もたれに手をついて、荒れ狂う心臓をなんとかなだめた。
「なんで、逃げるの…?」
すぐ後ろに翔さんが居た。
「か、帰ってよ!ヘンな事するなら…」