第10章 だいだい
「櫻井~…あいつらに謝っとけよ…?」
「わかってる…」
「あいつらだって好きで受けてるわけじゃないんだから…」
「わかってるよ。小佐野さんとこの機嫌損ねないためだろ?」
翔さんはウチの事務所最大のスポンサーさんだった人の名前を口にした。
今はスポンサーじゃないけど、まだ社長たちとの付き合いは続いてる。
ひえ…そんなとこから話回ってんの…
「俺からも言って断っておくけど…いつまでも続くぞ?こんなの…」
「じゃあ全部付き合えっていうのかよ…都知事選の時からうざいんだよ」
「櫻井…わかるけどよ…ウチだって断れねえんだよ…」
「わかってるよ…いいだろ、今日くらい」
らしくなく、荒れてる気がした。
「今日だけだぞ…」
チーフは優しい声を出して、それきりこの話題には触れなかった。
翔さんの今の苦しい立場は皆わかってるつもりだ。
その原因となってるお父さんも、きっと苦しんでるはずで…
翔さんちは、今、重苦しい雰囲気にあるんじゃないだろうか。
「あ」
「ん?どした二宮」
「俺のマネ、置いてきちゃった…」
この日のことは、自分のマネ忘れちゃったカズ事件として、長く嵐内に語り継がれた。
ちくしょー…