第10章 だいだい
「なに?」
俺を小脇に抱えたまま、翔さんは上機嫌だ。
「送りの車、もう一台来てんでしょ…なんで俺んとこ乗ってくのよ…」
「いいじゃん。なんか不都合でも?」
「いや、家帰るだけだからいいけどさ…」
「そう、じゃ俺が行っても不都合ないね?」
「えっ」
「遊びに行ってもいいよね?」
「だっ…」
だめ…とはいえない…
だってだめな理由はない。
嵐のメンバーなら、ね…
「いいけど…マネたち可哀想じゃん…」
そう言ったところで地下にエレベーターは着いた。
「実はさ…」
翔さんは俺を床に下ろした。
「この後、マネたちに言われて、なんかお偉いさんと飲みに行けって言われててさ…」
「え。そんなの行かなきゃだめでしょ」
「俺にだって選択の自由くれよ…いくら芸能人だからって…」
「…どこのお偉いさんなの…?」
「自由党…」
「うわ…」
きっと翔さんのお父さん絡みのことだ…
翔さんのお父さん、次の選挙に向けてロックオンされたままだからな…
「親父はもう表には出る気ないのにさ…だから逃げてきたんだ。巻き込んでごめんな?」
「いや…別にこんくらいいいけど…」
チーフの待つ車に乗り込んだら、チーフはマイガッって顔したけど、一つ息を吐き出して車を出してくれた。