第9章 退紅(あらそめ)scene3
昔から智くんは番組で共演した子供を凄くかわいがってた。
持って帰りたいとまで言っていたことがある。
俺はそれを…
智くんに与えることができないんだ。
「翔さん…そんなこと言わないの…」
ニノが俺を抱きしめる。
「翔くん…きっとなにかの間違いだよ…」
「お前らあの写真みてないからそう思うんだよ」
岩盤浴行って、焼肉行って…
付き合ってんじゃん。
どうみたって、このあと部屋帰ってヤリますコースだろ?
「ふ…いつからなんだろうな…俺、とんだピエロじゃん」
止めどなくあふれる涙はニノのシャツを濡らした。
潤がタオルで俺の顔を拭ってくれる。
その後、二人は何も言わずに寄り添ってくれた。
会場に入ると、もうセットは組み上がってた。
潤はそのままステージの方へ出て行った。
俺とニノは楽屋に入る。
「翔さんさ…宮城の間は、なんとか立っててよ。終わったら、いくらでも俺、話聞くから」
それには答えないで、俺は自分の荷物を出していた。
急に後ろから強い力で腕を掴まれた。
「いい?これは仕事。今から翔さんは、嵐の櫻井翔を演じて?」
ニノの目は潤んでた。
それほど俺の姿は脆く映ってるんだろうか…
「ああ…わかったよ」