第7章 ショコラscene3
先生はニッコリ笑うと、懐手をして俺を見た。
「櫻井さん、つかれてます」
「え…?いや、今日は仕事もしてないし…そんなに…」
「いえ、そうじゃないんです」
「え?」
「取り憑かれてます」
沈黙が客間に流れた。
「へ?俺が?雅紀じゃなくて?」
「はい。残念ながら」
背中に汗が伝っていった。
「え?どういうことなんですか…?」
「今日、なにかありませんでしたか?」
「なにかって…朝、乗っていた車が後ろから追突されて…」
「うん、多分それでしょうな」
「え?」
先生は顎に手を当て、何かを考えこむ顔になった。
「多分なんですが、普段からあなた方の周りに浮遊していた霊が、その隙を狙ってあなたに入りこんだんでしょう…」
「え?浮遊?」
雅紀が俺の手を握った。
「ごめん…言い出せなかったんだけど、最近、なんか居たんだよ…俺の周り…」
「えっ…なんで言わないんだよっ!?」
「それが…気配がね、居たり居なかったりで…どうしていいかわからなかったんだ…」
雅紀の目に涙が溜まってきて。
自分のせいだと責任を感じているのだ。
「雅紀…気にするなよ…先生がいらっしゃるんだから…」
「翔ちゃん…」