第7章 ショコラscene3
「な、なんでもないったら…」
雅紀の手から伝わるぬくもりが、一層俺の身体の芯に火をつける。
やべっ…顔見てるだけなのに…
「あっ…」
思わず内股になって、身体を前に倒した。
雅紀に恥ずかしくて見られたくなかった。
勃っちゃった…
「どうしたの…?具合悪いの?翔ちゃん…」
「…ちがう…離して…」
もう顔も真っ赤だろう。
雅紀の手が俺の肩に置かれた。
「…俺、なんかした…?」
「ううん…」
「俺のこと、嫌いになったの?」
「ちっ…違うっ…!」
思わず見上げたら、びっくりするほど雅紀の顔が近くにあって。
目を見開いたまま、どうしていいかわからなくなった。
「誰だ…?」
「え?」
「おまえ…誰だ!?」
「えっ…えっ…俺!?」
雅紀の顔色が変わった。
突然立ち上がると、テーブルに置いたままにしていたガラスのコップを掴んだ。
そのまま俺に向かってコップを投げつけた。
「うわっ…」
思わず頭をかばって目を閉じた。
ソファの後ろの壁で、コップが割れる音がリビングに響いた。
「…なにすんだよ…」
「翔ちゃん…行長先生のとこ行こ?」
「えっ…」
「早くっ…」
雅紀に痛いほど腕を掴まれて引っ張られた。
ぎゅっとその胸に抱きしめられると、また全身が心臓になったように鼓動が早まった。