第6章 ノクターン
ある日、大阪にジュニアの仕事で行くことになった。
俺は迷わず帰りに京都に寄ることにした。
大野さんは大歓迎してくれた。
「ニノ、よく来たね…」
そう言ってにこにこ笑ってくれた。
嬉しくて、嬉しくて。
公演終わりで疲れてる大野さんに、ついて回った。
「お前、なんなら今日泊まってく?」
原くんたちと3人で住んでるマンションの部屋に泊めてくれることになった。
「あれ?寮じゃないの?」
「うん。いろいろ不便だからね…」
にっこり笑って、大野さんは俺を手招きした。
「女、連れ込めないじゃん?」
「えっ…」
こっそり言われたことは、俺にとっては衝撃的なことで…
大野さんはそういうの興味なさそうだと思ってたから…
連れて行ってもらったマンションは、小さめのマンションで。
部屋に入ったら家具も殆ど無くて、キッチンにはゴミ袋が転がってた。
小さな犬が出迎えてくれて、ちょっとだけホッとした。
大野さんが、知らない人になったみたくて…
ちょっとだけ怖くなってたから。
犬を撫でていたら、大野さんはどっかに電話を始めた。
終わると、俺の顔見てまたにっこり笑った。
「おまえ、童貞だろ?」
「えっ…」
「女、呼んでやったから。今日で卒業しろよ」