第5章 ロザリオ
また扉が閉まりそうになって、翔くんが腕で扉を押し返す。
「潤…俺、もう止めるから…」
「え?」
「もうあんなこと、やめる」
「翔くん…」
「……こんな俺でもいいか?……」
翔くんが俯いた。
「こんな汚れてしまった俺でも…いいか…潤…」
ぽとり、涙の雫が床に落ちた。
「翔くん…」
「お前のせいなんかじゃない…俺だって…逃げたんだ…」
「違うよ…翔くん俺が…」
「お前のこと、本当は言う資格なんてないんだ!」
誰もいないエレベーターフロアに、翔くんの声が響いた。
「お前が俺から離れていくのが怖くて…逃げたんだ…」
「翔くん…違う…それは違うよ…」
「違わない…俺は卑怯なんだよ…」
また扉が閉まりそうになって、俺はエレベーターを出た。
翔くんの肩を掴むと、顔を上げさせた。
「それでも…翔くんは綺麗だ…」
「潤…」
「それでも、翔くんが好きだ」
涙に濡れた顔を翔くんはまっすぐ俺に向けた。
「俺で…いいの…?」
「いいに、決まってる…翔くんじゃないと、だめなんだよ?」
「潤…」
そっと翔くんの手を取った。
ぎゅっと握ると、走りだした。
「潤!?」
楽屋に逆戻りして、翔くんを中に詰め込んだ。