第5章 ロザリオ
「え…?」
もう一度、翔くんの腕を掴んで引き寄せた。
ぎゅっと抱きしめると、翔くんの顔を見た。
「けじめ…つけさせてくれてありがとう…」
「潤…」
「ちゃんと、俺たち別れてなかったからね…ごめんね。翔くんの手を離すことができなくて…」
また、翔くんの手を離した。
翔くんは俺の顔をただ、見ていた。
「…ニノのところ、行くの?」
「いや…ちゃんとさっき、謝ってきたよ」
「え…?」
「もう、戻れないってちゃんと言ってきたよ」
そっと翔くんから身体を離した。
「もう一個、けじめつけたい」
「…なに…?」
探るような目をして、俺を見つめる。
「翔くん…」
「…うん…なに?」
ふぅと一息吐き出す。
こんなに緊張したこと、ない。
こんなに心臓がバクバクいったこと、ない。
「好きです」
「え…?」
「俺は…いつまでも待ってるから…」
翔くんに手を伸ばしかけた。
でも、触れられなかった。
顎に残る引っかき傷。
ドーランで隠してるけど、近くで見るとわかる。
俺が付けた傷。
そして、翔くんの心にも…
俺は取り返しの付かない傷をつけてしまったんだ。
償わなければいけない。
「聞いてくれて…ありがとう…」
呟いて立ち上がった。
「じゃあ、帰るね」