第5章 ロザリオ
汐留に向かった。
今日は収録でもなんでもないから、中には入れない。
だから、翔くんには内緒でマネージャーに連絡して入館証を出してもらった。
時間は深夜になろうとしていた。
収録中に楽屋に入れてもらって、翔くんを待った。
畳敷きを見つめながら、俺はとても心が凪いでいた。
翔くん…翔くん…
深夜1時を過ぎる頃、翔くんが楽屋に戻ってきた。
扉を開けると、驚いた顔をして俺を見た。
すぐに察したみたいで、外にいるマネージャーに目配せしてから楽屋に上がってきた。
「どうした?」
「うん…ごめんね。こんなところまで押しかけて」
翔くんは黙って俺にお茶を淹れてくれた。
コトリと湯のみをテーブルに置くと、俺の顔をじっと見た。
「翔くん…俺、ほんと逃げてばっかりで…ごめん…」
そっと湯のみに手を添えると、熱かった。
「たくさん迷惑かけたし、たくさん感謝してる…本当に、ありがとう…」
翔くんの顔をまっすぐに見た。
「ほんと、何一つきちんとしてこなかったけど、ここでけじめつけさせてもらうね」
立ちあがって翔くんの隣に座った。
そっと抱き寄せると、翔くんはなんの抵抗もなく腕に収まった。
「翔くん…ありがとう…」
そっとその腕を外した。
「別れよう」