第5章 ロザリオ
ふと部屋のドアを見た。
開いていた。
半開きのドアに近寄り開けると、廊下の先に太陽の光が見えた。
久しぶりに見る光だった。
その光に吸い寄せられるように歩いて行くと、あの曲が聞こえてきた。
綺麗なソプラノとピアノの旋律。
光の漏れるドアを開けると、そこは翔くんの家のリビングだった。
窓辺に、翔くんが立っていた。
「翔くん…」
翔くんは振り返ると、じっと俺を見つめた。
そして、ゆっくりと口の端を引き上げ微笑んだ。
「潤…よくがんばったね…」
「え…?」
「もう、お前は大丈夫だよ」
「翔くん…」
「さ、お風呂入っておいで…」
翔くんに手を引かれて、浴室に連れて行かれる。
そっと手を離されて、翔くんは出て行った。
そこは、あの時無理やり入らされた浴室で。
今ならわかる。
あれは、アルコールを抜くためだったんだ…
汗くさい身体を洗い流して、さっぱりして。
湯に浸かって、心を落ち着けた。
翔くんには、感謝しかない。
どうしたら…俺はそれに報いることができるだろう。
風呂からあがると、バスローブが置いてあった。
それを着て、髪を拭きながらリビングに行くと、食事が用意してあった。