第5章 ロザリオ
いつの間にか泣いていた。
なんの涙かわからない。
次から次へと溢れてくる涙は、俺の髪を濡らし枕を濡らした。
突然頭が締め付けられるように痛んだ。
震える手で頭を押さえ込んでも、治まらない。
「あ…う…う…なんだこれ…」
胃液がこみ上げてきて、こらえきれず床にぶちまける。
喉が焼けつくように痛い。
それでもまだこみ上げてきて、次から次へと床へ溢した。
翔くんの持ってきてくれた水に手を伸ばすけど届かない。
助けを乞う資格なんかない。
ベッドの上に蹲ると、ひたすら体の中を吹き荒れる嵐と戦った。
「酒…酒が欲しい…」
酒を飲めば、この痛みから逃れられそうな気がした。
ベッドから転がり落ちて、ドアに縋る。
「翔くん…お酒…酒…が欲しい…」
目の前に火花が散る。
チカチカ光るものは目を閉じても俺の前で舞っている。
「翔くんっ…ここから出してっ…翔くんっ…」
何も聞こえないドアの向こうに苛立って、ドアに体当りする。
「出せよっ…ここから出せよっ…翔っ…」
何度も何度もドアにぶち当たって、それでもドアはびくともしない。
「出して…お願い…身体が痛い…痛いよぉ…」
涙が止まらなくて、視界がぼやける。
ぐにゃりとまた、視界が歪んだ。