第5章 ロザリオ
翔くんは黙って立ちあがった。
トレイを傍らの床に置くと、そのまま部屋を出て行った。
「待って…翔くんっ…」
ドアを開けようとしたけど、外から鍵がかかっていて開かなかった。
「え…嘘だろ…」
それからいくら呼びかけても翔くんは来てくれなくて、そこが開くこともなかった。
もう一個ドアがあったから開けてみたら、そこはトイレで…
「マジかよ…これって監禁…?」
時計もなにもない。窓もない。
いったい今がいつなのかわからない。
薄暗い室内を見渡して、ただ身体が震えた。
翔くん…
それほど、翔くんの怒りは深い…
膝から力が抜けて、床に崩れ落ちる。
「ごめん…翔くん…ごめんね…」
床に這いつくばったまま、手を組み祈る。
「どうか…翔くんを…俺はどうなってもいいから…翔くんを救ってください…」
一度、俺は死んだ。
だから、翔くん。
あなただけは死なさない…
俺をどうしてもいいから、だから…翔くんだけは…
それから俺は、床に這いつくばったまま祈り続けた。
板張りの床の冷たさが身体を冷やしても、尚祈り続けた。
翔くん…日の当たる場所に…帰って…
翔くんの居るところは、ここじゃないよ。