第5章 ロザリオ
心地いい音楽が聞こえる。
これ、なんの曲だっけ…
温かい手が頬を包む。
そっと目を開けたら、そこには翔くんが居た。
「翔…くん…」
翔くんは微笑むと、俺の額にキスをしてくれた。
「ここにいるから…潤…」
「翔くん…」
これは、夢…?
ああ…思い出した…
これはアヴェ・マリアだ…
綺麗な曲…
きっと俺、死んだんだ。
だからこんな夢、見られるんだ…
「翔くん…好きだよ…」
言った声は空間に吸い込まれていく。
伸ばした手を、翔くんの温かい手が握ってくれた。
「死んじゃって…ごめんね…」
ぎゅっと握られた手に力が入った。
「こうでもしないと…翔くん、楽にならないでしょ…?」
ああ…眠い…
おかしいな…死んだはずなのに…
「もう眠れ…潤…」
「翔くんは…あんな闇の中に居ちゃいけない…」
「わかったから…」
「死ぬのは…俺だけでいい…」
突然手を引かれて、俺は翔くんの胸に抱かれた。
「いいから、潤。目を閉じろ…」
言われたとおり目を閉じると、だんだん世界が俺に向かって落ちてくる。
そのまま地の底に引きずり込まれるように、俺は意識を失った。