第5章 ロザリオ
「翔くん…」
深夜、ベッドの中で愛しい人の名前を呼ぶ。
もう届かない声…
どうしよう…どうしたら翔くんを元に戻せる…?
全部、俺のせいだ。
俺が裏切ったから、翔くんは壊れたんだ…
目の裏に翔くんの裸体が焼き付いて離れない。
薄紅色に染まる、白い裸体を這いまわる別の男。
それを薄い笑みを浮かべて受け入れる翔くん。
起き上がると、キッチンへ酒を煽りに行く。
もう一日の飲酒量はとっくに俺の限界を超えてる。
わかってるのに飲むのをやめられない。
震える手は酒のせいなのか、翔くんを壊してしまったことの恐怖なのか…
「翔くん…お願い…」
誰にも届くことのない声…
それでも、出さずには居られなかった。
シンクの淵に手をついて、床に崩れ落ちると涙がこぼれた。
俺は…どうしたらいい…
どうしたら、翔くんを取り戻せる…
俺のもとに帰ってこなくてもいい。
元の翔くんに、どうしたら戻せる…?
「翔くん…翔くん…」
深夜、ひとりキッチンでうずくまってもなんの解決にもならないのは分かってる。
前に踏み出せない…怖い…
また酒を煽ると、歯止めがきかなくなった。
そのまま酒を煽り続けて、気がついたら外が明るくなっていた。