第5章 ロザリオ
それからも、酒を手放すことができなかった。
時には収録の合間に、こっそり隠れて飲むこともあった。
そんな俺を、翔くん以外のメンバーは心配そうに見ていた。
翔くんだけが、いつもどおり微笑んでいた。
俺の方は、一切見ない。
最初から俺は…翔くんの世界に存在しなかった。
その日も収録の合間に隠れて酒を飲もうと、倉庫に忍び込んだ。
あまり使われていないF倉庫は、人が居ない。
酒を隠しておくには絶好な場所だった。
隠しておいた酒を飲もうと、瓶に口をつけようとした瞬間、物音がした。
バレたと思って身を縮めていたら、見慣れないスタッフが、倉庫から出て行くところだった。
ほっとしてまた飲もうとしたら、倉庫の奥から物音がした。
知ってる人だったらまずいなと思って、そっと物音がしたほうをのぞき見た。
そこには、半裸の翔くんが横たわっていた。
「翔くんっ…」
思わず叫んで絶句してしまった。
だって…それはあからさまに、情事の後で…
翔くんの周りには使い終わったコンドームとティッシュが落ちていた。
「なんだよ…見せもんじゃねえぞ…」
くっくと笑って翔くんは俺を見上げる。
見たこともない、妖艶な顔をしていた。