第4章 ヴェニット
俺はおーちゃんの顔をあげると、ティッシュで涙を拭き拭きした。
「あのさ…俺も…おーちゃんと一緒の気持ちだよ?」
「え…?相葉ちゃんも和也のこと、好きなの…?」
「たぶん…ね…」
じゃなきゃ、こんな家に入り込ませたりしょっちゅう泊まらせたりなんてしない。
基本的に、他人を自分のテリトリーに入れるのは、俺はすきじゃないから。
ニノだから、それができたんだと思う。
そして…おーちゃんも…そうなのかな…
「ニノがどっかに行っちゃったらって思ったら、凄く…怖い…」
「相葉ちゃん…」
「俺なんか手の届かない、凄い俳優さんになっちゃったらって思うと…凄く怖いよ…」
「うん…」
おーちゃんの手が、俺の頬に触れた。
「相葉ちゃん…泣かないで?」
「え…?」
いつの間にか俺も泣いてたみたいで…
焦った。
「ご、ごめんっ…」
慌ててジャケットで拭おうとしたら、止められてティッシュでおーちゃんは俺の頬を拭ってくれた。
無心な顔で、俺を見上げるおーちゃんは、無垢に見えて。
思わず目を逸らしてしまった。
「相葉ちゃん…?」
二心を持っている俺が、酷く汚いやつに思えた。
でも…どっちも好きかもしれないっていうのは、本当で。
それは、どうにもできない事実だった。