第3章 チェリー・ポップ
「…智くんも、お疲れ…」
「俺…?なにもしてないよ…」
そう言って歩いて行く後ろ姿には、余裕が感じられた。
「ニノ…どう?」
湧き上がってくる妬心を押さえるように声を励ます。
「ん…今は寝てる」
寝室の扉を開けると、部屋の中は相変わらず薄暗くて。
フットライトを確認しながらベッドにたどり着く。
暗闇に目が慣れてくるに従って、ニノの寝顔が見えてくる。
「俺、風呂の準備するからちょっと見てて」
智くんはそう言って寝室を出て行った。
ベッドに近寄るとそっとベッド際に腰掛ける。
ニノはこの世の苦しいものを全部放擲してしまったような顔をして眠っていた。
智くんに…癒されたの…?
だからこんな顔してるの…?
そっと頬に触れると、ニノの手が俺の手を握りしめた。
きゅっと力がこもったかと思うと、また力が抜けていく。
「ニノ…?」
返事はない。
眠っているニノの唇に触れると、そのまま吸い寄せられるように唇を重ねた。
「…大野さん…?」
ニノの掠れた声が聞こえる。
「…あ…?翔…ちゃん…」
驚いて開かれる目。
揺らめいているその瞳に、俺を映させないように…
また俺は唇を重ねた。
なんで自分がこんなことやってるのか、わからないまま。