第3章 チェリー・ポップ
「まあね…」
「メインMCが身体動かないんじゃどうしようもないよ」
「会えた?ニノに」
「ああ…大野が今日は居てくれるっていうから帰ってきたけど…ありゃ重症だな…」
「やっぱ、そう思う?」
「ん…上と相談して、病院つれていくかもしれん」
「わかった…俺も今日また、行ってみるから」
「なあ…」
「ん?」
「大野と二宮…」
「あ…」
思わず俺は顔に出てしまったらしい。
「そっか…そういうことか…」
「いや…俺もよくわかんないんだよ」
「まあ、下手な女に引っかかって貰うよりいいけどね」
チーフは苦笑いして、タブレットを閉じた。
「大野に、明日天候が悪くて撮りが休みになったって伝えといて」
「わかったよ…」
きゅっとニノの部屋の鍵を握りしめる。
明日も二人は一緒に居るかもしれない。
得体のしれない焦りみたいなものが、俺のなかで沸き起こった。
あの手…俺にも差し伸べられていたのに…
ニノのマンションに着くと、知らず知らず急いで歩いていた。
部屋の鍵を開ける前に我に返って、チャイムを鳴らす。
智くんが出てくれて、部屋の鍵を開けてくれた。
「翔くん、お疲れ」
穏やかな笑みを浮かべながら、ニノの部屋の一部になったように智くんは俺を出迎えてくれた。