第3章 チェリー・ポップ
その日は一日、ニノと智くんの姿が頭から離れないでいた。
何度もトイレに入って顔を洗って、メイクさんに怒られた。
気を抜くとすぐにあの二人のことを考えてしまう。
どうして…あの手を離してしまった。
どうして、智くん一人に任せてしまった。
しょうがないのかもしれない。
ニノのあのすがるような顔。
あんな顔、俺だって初めて見た。
それに、それを抱き寄せる智くんの慈愛に満ちた顔。
あんな二人の顔…一度も見たことがない。
滑らかな褐色の肌。
抜けるような白い肌。
薄暗い部屋に浮かぶ二人は、夢の様に美しく儚く。
触れてみたい、と思った。
そこまで考えてぶんぶんと頭を振って考えを追い出してしまう。
おかしいだろ…
あいつらは男だ。
何考えてるんだ俺…
触れてどうしようっていうんだ…
そこまで考えてまた赤面して、立ちあがった。
収録終わり、マネージャーに明日のスケジュールを確認して楽屋を出る。
チーフがちょうど来ていたから、全員のスケジュールを確認すると、智くんとニノが次の日オフになっていた。
「え?これどうしたの?」
「二宮は…撮りを来週にしてもらった…あんな状態じゃだめだろ?」