第3章 チェリー・ポップ
大野さんはきゅうっと俺を抱きしめた。
「かず…俺も…」
それだけで充分だった。
嬉しかった…
「泣かないで…」
大野さんの唇が、俺の目尻を通る。
涙を吸い上げていった。
「ありがとお…」
抱き寄せて、大野さんの身体の熱を感じると、満たされた。
「抱いて…」
大野さんは、ガラス細工に触るみたいに俺を抱いた。
大事に、大事に俺を抱いてくれた。
大野さんが俺を口に含んでしまって…
その熱に耐え切れず、登りつめると俺の意識は途絶えた。
大野さん…
大野さん…
ありがとう…
次に目覚めたら、俺は大野さんの腕に抱かれていた。
お互い、何も着ないままだった。
腕枕をしてくれている、その腕に頬を当てた。
温かい…
ねえ大野さん…凄く今、しあわせだよ…
ここに居てくれて…ありがとう…
抱いてくれてありがとう…
規則正しい寝息を聞いているうちに、またうとうとした。
身体はちょっと痛むけど、眠さには勝てなかった。
大野さんにちょっとでも近づきたくて、身体を寄せて胸に顔を埋める。
大野さんの匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、俺はまた眠りについた。
寝室の外で、誰かが立っているのも気付かず…