第2章 グレイscene3
俺の車の助手席に無理やり智くんを詰め込むと、急発進で車を出した。
「翔ちゃん…どうしたんだよお…」
情けない顔してる智くんに一言だけ言った。
「シートベルトして」
シュンとした智くんは素直にシートベルトを締めた。
カチリという音がすると、車内にはカーステレオから聞こえてくる洋楽が流れているだけになった。
平日の都内の夜は順調に車が流れていて。
智くんは外を向くと、流れていく車窓に見入っていた。
車は俺の住居のあるビルの地下に入った。
「え…ここ翔ちゃんち…?」
返事をしないで車を停めると、助手席のドアを開けた。
「降りて」
「うん…」
また素直に智くんは着いてくる。
部屋に着くと鍵を開けて智くんを中に入れた。
「あの…翔ちゃん…?」
靴を脱がせると、腕を引っ張ってリビングに連れて行った。
「座って」
「うん…」
キッチンに行ってコーヒーメーカーをセットした。
またリビングに入ると、智くんの上着を脱がせた。
「あ、あの…」
テレビのリモコンを渡すと、俺は寝室に入った。
バスタオルとバスローブを2つずつ掴むと、バスルームへ行った。
脱衣所にきちんとセットして並べると、新品の歯ブラシを片方の上に置いた。
ふと振り返ると智くんが覗いていた。
「…なにしてるの…?」
俺は智くんの背中を押してリビングに戻った。
また智くんの手にテレビのリモコンを握らせると、キッチンへ戻った。
リビングからはテレビの音が聞こえてきた。
コーヒーサーバーからマグカップにコーヒーを注ぐと、リビングへ持って行った。
ソファに座る智くんの前のローテーブルにマグカップを置いた。
「あ…ありがとう…」
俺はカバンから智くんの作ってくれた缶詰を出すと、無言で赤貝を食べ始めた。
「あ…それ、持って帰ってくれたんだ…」
嬉しそうな顔をして、赤貝を食べる俺を眺めた。
ぷしゅっとビール缶を開けると、俺は一気にそれを煽った。