第2章 グレイscene3
潤…あの時俺のこと見ててくれたみたいに、俺も潤のこと見てるから…
公演が終わるごとに姿を消す潤を追った。
意識を失うように眠る潤の手をそっと握って、なんとか決壊しそうな気持ちを抑えた。
無防備に横たわる潤に触れたくてしょうがなかった。
抑えられなくなりそうで怖かった。
目が覚めそうになると、そっと手を外す。
潤のぬくもりに未練が残った。
それなのに…
あの日、潤はうっすらと目を覚ますと濡れタオルを替えようとした俺の手を握りしめた。
そのまま手を自分の胸にぎゅっと押し当てたのだ。
ありがとう、と言っているようだった。
潤の汗に濡れた胸と体温が、俺の血を沸騰させた。
もう我慢ができなくなっていた。
眠ってしまった潤の頬にそっと手を寄せた。
「潤…?」
規則正しい寝息を立てている潤には聞こえない声。
「好き…」
そっと唇を重ねた。
この日から、俺はもう気持ちを抑えることをやめた。
潤と一緒に居たい。一緒にいるんだ。
そのために今までした努力よりも、何倍も努力した。
友達として、最も近い位置にいられるように。
俺の想いは…決して悟られてはいけない。
潤の傍に居られなくなるから。
だから、友達として…傍に…
一途に、そう思っていた。
気がついたら、潤と一緒に住んでいた。
俺が潤の家に転がり込んだ形だけど…
それでも潤は嫌がる素振りもなくて。
むしろ、それが自然な形になっていった。
俺たちは何でも相談できる友達。
親友になって行ったんだ。
だけど…
いつこの関係が崩れるか、不安で。
いつ潤が俺から離れていくか、不安で。
俺は一歩も踏み出せずに居た。
真っ暗闇の中に立っていた。
潤のことだけ、見えなくなる時もあった。
近づけは近づくほど、足元が見えない。
それでも…
俺は潤から離れることができなかったんだ…