第2章 グレイscene3
なんだよ…なんでそんなこと言うんだよ…
俺と潤は反りが合わない。
同じ年ってこともあって、お互いライバル視してるっていうか…っていうか、潤が一方的に張り合ってくるっていうか…
俺はそういうの苦手だから、潤のことずっと避けてた。
翔くんに注意されたりするけど、こればっかりはね…
そんな相手に、こんなことされてる。
なんだかヘンな気分だった。
「離せよ…痛い…」
「あ、ごめん…」
俺はため息を付いて、正直に言った。
と言うか、言うしかなかった。
これ以上の迷惑は掛けられなかったから。
「正直、ツライ。だからハンドマイク以外のなにか欲しい」
「ヘッドセットでいい?」
「うん…それで行けるなら…」
「大丈夫。俺がちゃんと言うから。他には?」
「後、衣装チェンジ…」
潤は真剣な表情で俺の要望を聞いてくれた。
通しでできそうなところとできなさそうなところまで話せた。
大人には…こんなこと言えなかったのに…
「わかった。俺、ちゃんとするから…だからニノ、安心しろよ?」
「潤…」
「大丈夫だって。コンサート、頑張ろうな!」
潤だって、本当は不安なはずだ。
演出に関わるようになったとはいえ、やっぱり大人のいうことが優先されるんだから…
俺にこんな安請け合いしていいのか…?
「潤…大丈夫…?」
「お前こそ、大丈夫かよ…」
「ん…」
「大丈夫なわけないか…」
そう言ってまた、遠慮がちに俺の手をとった。
「ステージの上は俺達しか居ないから…何かあったら言えよ?」
真剣な眼差し。
潤は、単純にコンサートを成功させたかっただけかもしれない。
だけど…だけど俺には、この時の潤が特別に見えた。
コトリと心の中の小箱が動いた。