第2章 グレイscene3
あっつい…身体あっついよ…
熱が高い。
関節が痛い。
指の関節まで、もう自由が利かない。
「二宮、行けるか…」
事務所のおじさんたちの声が聞こえる。
なんとか歯を食いしばって答える。
「行けますよ」
まだ若かったと思う。
それに、大事なコンサートだったし…
こんなところで躓いてる訳にはいかない。
だって嵐はまだ発展途上。
俺が欠けたら、嵐じゃない。
そんなことさせられない。
「本当に行けるんだな?」
大人の事情なんて俺には関係ない。
病気の未成年者を働かせたって怒られることなんて、俺には関係ないよ。
バレないようにするのがアンタたちの仕事だろ?
コンサートさえやっちゃえば、こっちのもんだって。
そんな考え方する俺は、ひねくれた子供だったと思う。
「じゃあ、開演までここでおとなしくしてるんだぞ…?」
そう言って控室を大人たちは出て行った。
「くっ…」
他の連中はリハーサルに出てる。
一人になった俺は、ソファに倒れこんだ。
身体が痛い…
全身を針で刺されているようだ。
テーブルに置いてあるスポーツドリンクに手を伸ばす。
「う…もう…」
届かない。
もうちょっと…もうちょっとなんだけど…
伸ばした指の関節が腫れ上がってる。
これじゃ…マイク持てないな…
ぼんやりとそう思った。
諦めて腕をぱさりと落とした。
「ニノ」
突然、頭上から声が降ってきた。
見上げると、そこには潤が立っていた。
「これ、飲みたいの?」
なんだよ…居たのかよ…
俺は薄く頷くと、潤はペットボトルを取ってくれた。
でも蓋が開けられなかった。
無言で俺から取り上げると、蓋を開けて渡してくれた。
「…ありがと…」
スポーツドリンクを飲む間、潤はじっと俺を見ていた。
飲み終わると俺からまたボトルを取り上げ蓋をしてソファのすぐ下に置いてくれた。
「あのさ、さっきの話聞かせて貰ったけど…マイク持てる?」
正直言うとキツい…
潤は俺の熱っぽい手を取ると、そっと手を重ねた。
「俺、ちゃんとフォローするから言って?」