• テキストサイズ

【HP】月下美人~もしもの話~

第6章 高砂百合。


 翌日の朝、セブルスは朝の日課の温室通いのため寮を抜け出した。
 高砂百合を引き抜いてしまうかどうかは、まだ決心がつかない。
 除草作業はおそらくスプラウト教授が行っているのだろうが、物置小屋の脇までは手が回らないのだろう。
 知らない誰かが他の雑草と一緒に処理してくれていたらいいのに、とセブルスは思った。


 と、前方に立ち止まっているキラが見えた。
 昨日言っていたように、百合を確認しにきたのだろう。
 しかしキラはその場で立ち止まっているようだった。
 温室の手前に、何かあっただろうか。
 セブルスが不思議に思って見ていると、キラは自分の手の平を見つめて、小首を傾げた。
 彼女に追いついて、その背中に声をかける。


「なにをしてる」
「あ! セブルス! 聞いてください!!」


 振り向いたキラは、興奮したように緑色の瞳を輝かせた。
 背の高いセブルスを見上げて、キラは身振り手振りを使って必死である。
 そんな彼女の話をセブルスは黙って最後まで聞いていた。
「――そうか」
「信じられませんか?」
 唇を尖らせる彼女に、セブルスは小さく笑む。
「ここは魔法界だ」
 その言葉にキラは大きく頷いた。








「あ、やっぱり…これ、高砂百合です」
「そうか」



 雑草と呼ばれる百合は、そのままにすることにした。
 自分の育てているイースターリリーと交じっても構わないと思った。
 百合が純血である必要は、どこにもない。









end

/ 27ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp