第6章 高砂百合。
翌日の朝、セブルスは朝の日課の温室通いのため寮を抜け出した。
高砂百合を引き抜いてしまうかどうかは、まだ決心がつかない。
除草作業はおそらくスプラウト教授が行っているのだろうが、物置小屋の脇までは手が回らないのだろう。
知らない誰かが他の雑草と一緒に処理してくれていたらいいのに、とセブルスは思った。
と、前方に立ち止まっているキラが見えた。
昨日言っていたように、百合を確認しにきたのだろう。
しかしキラはその場で立ち止まっているようだった。
温室の手前に、何かあっただろうか。
セブルスが不思議に思って見ていると、キラは自分の手の平を見つめて、小首を傾げた。
彼女に追いついて、その背中に声をかける。
「なにをしてる」
「あ! セブルス! 聞いてください!!」
振り向いたキラは、興奮したように緑色の瞳を輝かせた。
背の高いセブルスを見上げて、キラは身振り手振りを使って必死である。
そんな彼女の話をセブルスは黙って最後まで聞いていた。
「――そうか」
「信じられませんか?」
唇を尖らせる彼女に、セブルスは小さく笑む。
「ここは魔法界だ」
その言葉にキラは大きく頷いた。
「あ、やっぱり…これ、高砂百合です」
「そうか」
雑草と呼ばれる百合は、そのままにすることにした。
自分の育てているイースターリリーと交じっても構わないと思った。
百合が純血である必要は、どこにもない。
end