第76章 ヒソップ
真夜中、腹が減って目が覚めた。
「ん…」
身体が温かい。
布団の中に、なんか温かいものがある。
「あ…気がついた?」
暗闇の中、布団の中の温かいものが顔を上げた。
「大野さん…」
あれ…なんで大野さんが俺の家に…
熱で幻覚みてんのかな…?
「ごめんね。早速、合鍵使って…会社から連絡あって、翔が風邪引いて早退したってきいたから…」
あ、リアルか…
夢かと思った。
あ、そっか…
俺たち、恋人になったんだった…
そういや今朝、強引に俺んちの合鍵、渡したんだった…
「智…」
「ん?」
「腹と腰…平気?」
「うん…もう大丈夫だよ?」
ベッドサイドに置いてる棚の上のライトを、智は点けた。
「ごめんね。熱測らせて?」
棚の上に置いてあった体温計を取ると、俺の脇に挟み込んだ。
「風邪…伝染るぞ…」
「伝染ったら早く治る」
「ばか…」
ピピッと音が鳴って、同時に俺の腹も豪快にぐうっと鳴った。
「ぶぶっ…お腹減った?」
「…はい…」
「熱は…?」
体温計を取ると、笑顔を見せた。
「熱、下がってるよ」
「ほんと…?俺ってば丈夫だな」
そっと智が額に手を置いてくれた。
「なんか作るよ…」
「えっ…いいよ…」