第76章 ヒソップ
我慢ならなくなって、ぐいっと細い腰を引き寄せた。
「早退したら、なんでもやるから。だから、帰れ?な?」
「あ…もう…」
俺の腕から逃れようとするけど、壁に押し付けた。
「じゃないと、ここでキスするぞ?」
「うぇっ!?」
驚いてる顔の横に手をついた。
「さあ…どうすんの?」
「え…あ…その…」
「会社で…上司とそーんなことしちゃっていいのかなー?大野さん…」
「やっ…やあっ…もおっ…」
ぐいっと俺の肩を腕で押すけど、退いてやらない。
「わ、わかりましたっ…午前で早退しますっ…」
「よし、いい子だ」
結局、ちゅってキスしちゃったけどね。
それからもう、ずーっと智は真っ赤な顔をしてて…
なんか情事の後みたいな顔してるから、ヒヤヒヤした。
午後になってやっと早退していってホッとしてたら、今度は俺がくしゃみ連発で。
どうやら昨日、ビショビショのままで智の介抱をしてたから、風邪を引いたみたいだ。
「課長、帰ってください。バイオテロする気ですか」
野瀬に言われて、しょうがなく仕事を引き継いで家路についた。
そのまま近所の医者に行ったら、風邪だって言われて。
おとなしく薬をもらって、家に帰った。