第76章 ヒソップ
「俺も…一緒だよ…」
「え…?」
「俺は男だから…だから、智の役に立ちたいって…それだけを願ってたのに…まさか、好きでいてくれるなんて思わなくて…」
潤んだ目を見つめたまま、頬を手で包んだ。
「キス…してくれた時、幸せになりたいって…思ったんだ…」
「うん…」
「翔、と…しあ、わせに…なりたいって…」
ぐしゃっと顔が歪んで、泣き出した。
「かあさん…死んじゃったばかりで…いけないって思ったんだけど…だから四十九日が終わるまで、がまん、したっ…」
「うん…うん…」
涙をバスタオルで拭きながら、髪を撫でた。
「ほんとはあの時みたいに抱きしめて貰いたかったけどっ…がまんっ…したっ…」
「…ん…」
智の腕を引いて、身体を起こすと抱きしめた。
「これからは…いっぱい…抱きしめるから…」
「うんっ…」
なめらかな皮膚の背中をゆっくりと撫でながら、泣き止むのを待った。
「しょう…?」
「ん…?」
「…大好き…」
「うん。俺も…智が、大好きだよ…」
ぎゅっと…
いつまでも俺たちは抱き合った。
本当に幸せで…
泣けるくらい。
男同士だから…この先一体なにがあるかはわからない
でも、智…
これから先の人生
いつでもあなたが泣きたい時
抱きしめるのは、俺でありたいと
そう、思った