第9章 櫻井翔のキケンな夜会4
いきなりすっくと立ち上がると、雅紀はまたブーツを履いて玄関から飛び出していった。
俺はパンツ一丁で、取り残された。
裸だから、雅紀を追いかけることもできなかった。
「いや…マジ…一体なんなんだよ…」
Tシャツとスエットを掴んでリビングに戻る。
汗ばんだ肌にエアコンの冷気が染みた。
「浮気者?なんで俺が浮気なんか…」
はっと気づいた。
「今日何曜日だ!?」
カレンダーを見ると、木曜日。
「ああああっ…」
慌てて寝室へ飛び込んで外出着に着替えた。
取るものも取りあえず、家を飛び出した。
地下の駐車場に着くと、俺の車の隣に雅紀の車が止まっていた。
「え…?雅紀、まだ居るの?」
車の中を覗きこんだけど、雅紀は居ない。
念のため車の周りを歩いてみたけど、どこにも居ない。
慌ててエレベータに乗って一階へ出る。
正面のエントランスから外に出ると、植え込みの前に座り込む人影。
「雅紀っ…!」
雅紀が植え込みに隠れるように、泣いていた。
「雅紀っ…ごめん!ごめんて!」
「いやぁ…翔ちゃん来ないで…」
「そんなとこに居たら、虫に刺されるから、ね?」
無理やり雅紀の腕を掴んで立ち上がらせた。