• テキストサイズ

ヘブンズシュガーⅡ【気象系BL小説】

第76章 ヒソップ


そんな大野さんの気持ちが、痛いほど伝わってきて。
なんと言葉を掛けていいのか、わからなかった。
ただただ、抱きしめているしかできない。

看取る覚悟で帰国したのに、ここまで乱れるほど…
大野さんにとって、母親の存在は大きかったんだ。

「すい…ませ…ん…ごめん…なさい…」

泣きながら謝って。
俺にしがみついて…

「いいから…謝るな…」

どうにか謝るのを止めさせたくて。
ぎゅっと腕に力を入れた。
背中を擦ると、段々と泣き声は小さくなり。

やがて、鼻をすする音だけになった。

その頃には、子供をあやすように背中をぽんぽんと叩いて。

大野さんの香りに酔っていた。
甘い…匂いがした。

「シャツ…ごめんなさい…」

腕の中でボソボソと言うのが聞こえた。

「気にすんな。クリーニング120円だ」
「…ふふ…」

そっと大野さんが身体を離すと、顔を上げた。

「ありがとうございました…」

さっきより、更に酷く腫れ上がった目をしていたけど、スッキリしてるようだった。

「必ず、連絡くれよ…」

プライベートの電話番号を教えていなかったから、名刺の裏に走り書きして、ワイシャツのポケットにねじ込んだ。

/ 1000ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp