第76章 ヒソップ
「中部統括課は、中部地方を主に担当していて…主な顧客は豊海自動車など、中部地方に本社を置くメーカーになる。まあ、この辺はトレセンでやってきたよね?」
「はい。頭に入れてあります」
「じゃあ、次は具体的な業務内容だけど…」
午後の三時くらいまで、ざっくりとした説明をした。
「…もう三時か…」
喋り疲れてしまったから、休憩をすることにした。
「あー…休憩しよっか」
「はい」
大野さんはメモしていた手を止めて、俺を見上げた。
「…コーヒーでも飲んでくる?」
「え?」
「初日だから緊張するでしょ。息抜きしよう。1階にコーヒーショップあるから、行こう」
課の子にちょっと席を外すことを伝えて、フロアを出た。
エレベーターで1階まで行くと、チェーン店のコーヒーショップに入った。
大野さんの分は、初めてなので俺が奢った。
「すいません。ありがとうございます」
変に遠慮せず、素直に受け取ってくれた。
「いや、いいんだ。そうだ。今度、歓迎会やろうと思うけど、酒は飲める?」
「問題ありません」
受け答えは至ってシンプルで無駄がない。
相当この人、できそうな気がする…
窓際のカウンター席に隣り合わせで座った。