第75章 今日の猫来井さん②
手のひらに載せますと、なんとも言えない感触がします。
ぬるぬるぬめぬめふんにゃりひんやり…
黒光りしたボディは、何かを連想させます…
「ごほん…」
気を取り直して、どう調理しようかと考えておりますと、手のひらの海鼠がむにゅっと動きました。
「わっ…」
びっくりして水槽に海鼠を落としてしまいました。
「あらあら…ごめんなさいね。海鼠さん…」
そっと水面を手で撫でると、なにか聞こえました。
「…え…?」
猫野さんが起きたのかと後ろを振り返りますが、姿が見えません。
なんだったのかしら…?
そう思いながら、シンクに向き直りますと、そこには…
「ひゃあああああっ…」
「痛いんですけど…」
「なっ…なっ…」
先程落とした海鼠さんが、水槽の縁に腰掛けています。
「あんたさあ…私に痛覚ないと思ってるでしょ…びっくりするでしょうが…」
「なっ…なっ…海鼠が喋ったぁぁぁ~~!!!」
どたんと後ろにひっくり返ってしまいました。
「…あらあ。びっくりさせた?ごめんねぇ~」
海鼠なのに、カラカラと笑っています。
「きゅう…」
あまりの衝撃に、私は気を失ってしまいました。