第8章 ヴィンテージ・ワインscene1.5
目が覚めたら、朝になってた。
腰が痛い…
暫く潤の腕の中で、昨日のことを思い出していた。
「あっ…」
全部思い出して赤面した。
あんな…あんなことできるなんて…
思ってもみなかった…
恥ずかしくて身悶えていると、潤が目を覚ました。
いつもどおり寝起きは悪い。
潤は据わった目で俺を見ると、がばっと起き上がって俺にのしかかってきた。
「じゅっ…潤!?俺、もう無理だあっ…」
「わかってる…」
「へ?」
ぎゅうううっと抱きしめられると、潤は起き上がって俺の頬を手のひらで包んだ。
「和也…寂しい思いさせてごめんね…」
「何言ってんだよ…潤だって俺が映画やドラマ撮ってる時、淋しかったろ?」
「うん…でも…」
「え?」
「尿道に棒つっこむくらい寂しいとは思わなかったからさ…」
「い…いやっ…それは…」
「ごめんな?和也」
にやりといたずらっこみたいに笑った。
「…愛してる…潤…」
「え…?」
「愛してるよ…ごめんね?棒に浮気して」
「ば、ばーか…」
また潤は俺をぎゅうっと抱きしめてくれた。
その広くて熱い胸に包まれて、昨日以上の幸福を俺は感じた。
愛してる…ずっと…
激しく燃え上がるようなことはないけど…
きっとこれが俺たちの形。
ずっとずっと続いていく俺達の愛。
リビングに出ると、あの扇風機がまだ風を部屋に送っていた。
スイッチ切り忘れた…
一晩中、愚直に風を出し続けていたこいつが愛おしい。
「和也?風呂入ろ」
「うん…今行く」
扇風機の頭を撫でながら、俺は世界一愛している恋人の後を追って行った。
俺達の細く長い愛は、これからも…
永遠に…
【END】