第73章 you have…
「あんた…」
「ん…?」
「底抜けの馬鹿なんだね…」
「うん…俺も、そう思う」
ニノが顔をあげた。
じっと真っ赤になった目で俺を見つめる。
「ねえ…あんた、どっちなの?」
「え…?」
「上?下?」
「え…?」
「セックスの時、どっちなのって聞いてるの」
「う…」
言い淀んでいたら、脇腹をぎりっと抓られた。
「痛いっ…」
「ねえ、どっちなのよ。正直に言いなさいよ」
「う…し、下…」
「ふうん…」
突然ニノが起き上がった。
「じゃあ、いいか…」
「え?え?」
俺の腕を引っ張り上げると、立ち上がらせた。
ぐずっと鼻を啜ると、俺の腕を引いて歩き出した。
「あ…あの…ニノ…?」
黙ってニノは俺を連れて歩いていく。
その先は、寝室だった。
「ここに居て」
そう言うと、ニノは寝室を出ていった。
「あ、あのっ…ニノ!?」
バタンとドアを閉められて、ガチャっと鍵の掛かる音がした。
「えっ…」
慌ててドアに飛びついてノブを下げた。
「開かない…」
どうやら、閉じ込められたようだった。
「え…ええ…ちょっと…」
どうすることもできなくて、ベッドに座り込んだ。
ここは…あの日俺が抱かれた場所で…
ニノと智が愛し合っていた場所で…
なんだか鼻の奥がツンとしてきた。