第73章 you have…
ぐっと智が詰まった。
「そ、そんな訳ないだろ!?」
思わず叫んでいた。
「智は…智が俺に惚れるなんて…誤解だよ」
「翔…」
「み、見てよ…俺、服のセンスもない…ダサいしなんの取り柄もない…」
「は…わかってんじゃん…」
軽蔑するような眼差しでニノが俺のこと見る。
でも、言わないとダメだと思った。
だって、智が好きなのは…
俺じゃないから
「話し…しようよ。ニノが納得するまで」
「は?」
「翔、何言ってんだよ!」
智が俺の肩を掴んだ。
「だって…ニノ、誤解してるから…」
「翔っ…」
「ちゃんと話せば、わかってくれるよ。ね?俺に任せて?」
「翔、あのな…」
「いいよ」
俺の腕を、ニノが掴んで引っ張った。
あの日みたいに、俺はよろけてニノの胸に飛び込んだ。
ふわっと漂ってくる香水…
これ、智と同じ香りだ…
やっぱり…
「話そうじゃない…ね?翔…」
ニヤリと笑うと、智を突き飛ばした。
「一晩借りるね、智」
「いや、ちょっと…」
それでも立ちあがって智は止めようとする。
「潤っ…」
ニノが叫んだ。
後ろで人だかりになってる中から、潤が飛び出してきた。
「その人押さえててっ…」
「わかった!」
そう言ってニノは走り出した。
「うわっ…」
足が縺れそうになりながら、大通りまで出るとタクシーに押し込められた。
「麻布まで」
ぶっきらぼうに言うと、それきりニノは黙り込んだ。
智は、追ってこなかった。