第73章 you have…
「待てよ!ニノ!」
智がニノの肩を掴むけど、ニノはそれを激しく振り払った。
「触んないでよっ…」
「待てってば!」
爆音で何を言っているのかよく聞こえない。
ニノは俺の腕を引いて、どんどん出口に向かっていく。
暗くて、椅子に躓きながら引きずられるように、後ろを歩く。
出口の防音の分厚い扉を開けて外に出た。
智が後に続いてくる。
「待てってば!ニノ!」
「うるさいなあ…」
立ち止まると、じっと俺の顔を見た。
「…ちょっと話し付けるだけだからさ…」
「だから、翔は…」
「なによ。関係ないとは言わせないよ?」
ぐいっと俺の胸ぐらをつかんだ。
顔を近づけて、ニノは俺を睨んだ。
「ドロボウ」
「え…?」
「あんた、俺から智をドロボウしてったんだよ。当事者。だから話しつけようって言ってんじゃん」
生まれて初めて、そんなこと言われた。
殴りつけられたようなショックを受けた。
「違うだろ…ニノ…」
俺の胸ぐらを掴む手を解くように智が払った。
「翔が盗ったとか、盗られたとか…そういう話しじゃねえだろ?」
「じゃあなんなのよ。なんで帰ってこないのよ」
「だから…」
「まさか、惚れたとか言わないよね?」
智の後ろに人だかりができていて、ヒューっと声をあげた。
いつの間に…
完全に面白がってギャラリーができてる。