第73章 you have…
カウンターに凭れながら、ニノは微笑んで俺たちを見てた。
背筋に汗が流れた。
あれから、ニノの姿を見るのは初めてだった。
「こいつら、マジだよ。無駄だって…」
潤はそう言うと、俺たちに手をひらひらと振って離れていった。
入れ替わりにニノがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「久しぶり。智…翔…」
ビールの入ったグラスを、カツンと俺と智のグラスに当ててきた。
「久しぶり、ニノ」
智は微笑んでグラスを手に取った。
目の高さまで掲げると、ぐいっと酒を飲み干した。
動けずにいたら、フロアの明かりが一段落ちた。
派手な音楽が爆音で掛かって、DJの叫ぶ声がスピーカーから聞こえだした。
ニノはそっと智に顔を寄せると、耳元でなにか話した。
智はそれを無表情で聞いてる。
智から離れると、クスクスと笑いながらニノは俺を見つめた。
「…なの?翔?」
「え?」
爆音で、ニノが何を言っているのか、よく聞こえなかった。
「借りるね。智」
そう言うと、ニノは俺の手を握った。
「一緒に…来て…?」
真っ直ぐに俺を見つめて…
その奥には、嫉妬。
嫉妬の青い炎が見えた。