第73章 you have…
音の洪水と、闇と光の渦…
うるさいほどのメロディーに身を任せていると、気持ちがいい。
あれから、数え切れないほど智と身体を重ねた。
ニノの家はまずいからって、一人暮らしの俺の家に智はよく来て…
今じゃもう、俺の家に住んでるも同然だった。
俺の…恋人って言っていいのかな…
いいや…智にはニノがいる。
智にとって俺は、ほんのひと時の遊び相手なんだろう。
だって智は、男にも女にもモテる。
智なら、選び放題だ。
現に今だって…フロアの端っこ…
あれは、誰だろ。
最近、よく来るようになった潤とか言ったっけ。
言い寄られてる。
なんだか寂しいけど。
でも、恋人同士になるなんて…
そんな大それた夢を持つほど、俺は図々しくはなかった。
それでも、俺はしあわせだった。
目の端に、智が映る。
智が笑ってる。
生きてる。
それだけで、しあわせだった。
智がこちらに向かって歩いてきた。
潤もその後についてくる。
「翔…飲んでる?」
「ん…智は?」
「飲んでるよ…」
カランと氷の入ったグラスを掲げると、俺のグラスに当てた。
「カンパイ。翔…」
「乾杯。智…」
潤はそれを見て、呆れた顔をして俺の向かいに座った。