第73章 you have…
「…かわいい顔してんね…翔…」
ぼそっとニノが耳元で囁いた。
「……?」
くすっと笑うと、身体を離してニノはフロアに消えていった。
「…何あれ…」
自分のほうがよっぽどかわいい顔してんのに。
「くっく…ニノはバイだからね…気をつけろよ、翔」
「えっ…」
「ケ・ツ」
そう言ってさらりと雅紀は俺のケツを撫でた。
「うわっ…なにすんだよっ…」
「あ、智来てんじゃん。智ー!」
ケラケラ笑いながら雅紀は智の方に歩いていく。
「おい…ケツ触んな…」
智のケツも雅紀は揉みしだいている。
「いいじゃ~ん…ねえ、ニノともう寝たの?」
「ん?ふふふふ…」
智は答えないで俺を見た。
「誰?」
「あ、あれ?知らなかったっけ?俺のダチ。翔」
「…ふうん…翔…」
智は半年ほど前に一度だけ喋ったことがあった。
でも、もう忘れてるんだろうな…
「ごめん。自己紹介…」
「いい。一緒に酒、飲もうよ」
前髪をさらりと上げると、智は笑った。
グラスを掲げてカチリと合わせると、また笑った。
俺をずっと見てる。
ドキっとした。
その目は、うっすらと潤んでいて…
唇は、艶やかに輝いていて、濡れているようだった。
なんだか気恥ずかしくなってフロアに目を向けると、DJタイムが始まった。
爆音で流れる音楽が、雅紀と智の会話を聞こえなくする。