第70章 咲ちゃん
飛びついてきたおぼっちゃんたちを胸に抱きしめて、ソファに座った。
「こわかったぁあ…悪魔の叫び声みたいなの聞こえた…」
「悪魔って…」
「違うよ!あれは、地獄の獄卒だよ!」
「ご、獄卒って…あんた…」
「こわかったよお…咲ちゃん…」
「はいはい…」
「こわかったねぇ…咲ちゃん…」
「んだね、んだね」
まーくんのサラサラの毛を撫でながら、さとくんの猫っ毛をぐりぐりして落ち着かせる。
「すん…すん…」
「ずずっ…ずずっ…」
やっぱり…さとくん、鼻炎気味ね…
お医者さん連れて行かなきゃ。
ああ…まーくん、泣きすぎて目が真っ赤。
ん?待てよ?今日一日ずっとじゃないか?
「もしかして…まーくん?」
「ぎゅ?」
「花粉症?」
「ぎょえ…」
仰け反って逃げようとするまーくんをふん捕まえた。
「待ちなさいっ…」
「ぎゃあああ!いやあああ!お医者連れて行かれるぅ!」
「やー!咲ちゃん、まーくん泣いてるいやああ!」
「こ、こら、さとくん離しなさいっ」
まーくんを捕まえる腕にさとくんがぶら下がっている。
重くはないが、暴れるから手がつけられない。
「ま、ちょ、待ちなさいっ…」
ちょっと力が緩んだ隙に、花粉症も鼻炎も逃げ出していった。
「もお…なんなのよお…」
こうなったら、夜の夕飯前にでも捕まえるしかないか…