第70章 咲ちゃん
「あれ…母さん寝てるん?」
遠くで息子の声が聞こえる。
「あ、おかえり。さっきから寝てるの」
「ふうん…」
ん…?
あれ、いつの間にか寝ちゃったのか…
「なに…なんか母さんニコニコしてるわ…」
「気持ち悪…」
なんだと、こいつら…
娘に息子め…
こいつらには美味しいふろふき大根は喰わせてやらんぞ。
つっても、まだまだこの年頃は肉がすきだけどね…
「あー腹減った…」
「そだね」
「ま、いっか…」
「そだね」
あれ?
起こさないの?
「せっかく幸せそうな顔して寝てるから、寝かせとこっか」
「そだね」
ふうん…
じゃあ、お母さん、甘えますよ?
「なぁん…」
人間の息子と娘は放って置いてくれるのに、このおぼっちゃん…
「ん…もお…邪魔しないでよ…」
「なあん…なあん…」
くそう…せっかく雅紀猫と智猫の夢みてたのに…
ん?
夢…?
「うひゃあっ…」
ガバッと起き上がると、キッチンに走った。
「あ~…ああ…」
やっぱり…ふろふき大根は夢の中で作っていたようだった。
「ううう…リアルやり直し…」
「何いってんの?腹減った」
「そだね。腹減った」
「う…うるさーーーーいっ…」
地獄の獄卒だか、悪魔だか…
今日も、かあちゃんがんばります。
【おわり】