第70章 咲ちゃん
「さきちゃあんっ…」
「うわあんっ…さきちゃあんっ…」
飛び込んできたふたりをぎゅうっと抱きしめた。
「もう…けんかはしないこと?いいね?」
「はぁい…」
「はああい」
ふたりの頭をよしよしして、冷たくなった手足を温めてあげる。
「あったかあい…」
「あったかいよお」
「ふたりでくっついてたら、もっとあったかいよ?」
そう言って、ふたりの身体にブランケットを掛けてあげた。
「本当だ!まーくんあったかい!」
「本当だ!さとくんあったかい!」
ぎゅっとふたりは抱きつくように身を寄せ合った。
「咲ちゃんも…いっしょ…」
「ん?私はいいよ…することあるし…」
「やだ。咲ちゃんも寝るの」
「もお…」
今度は私か…頼む、一人にしてくれ…
「じゃあ、まーくんとさとくんがいい子で寝られたら、一緒に寝てあげる」
「ほんとぉ!?」
「ほんと?」
「うん。ほんと」
慌ててブランケットにふたりは潜り込んだ。
「もー寝るよ?」
「寝る!寝る!」
「はいはい…」
ブランケットの上から、ふたりの背中をぽんぽん。
すると、スースーと気持ちのいい寝息が聞こえてきた。
「よし…今のうち…」