第70章 咲ちゃん
「咲ちゃん、あーそぼっ」
「あーっ!咲ちゃんはぼくとあそぶのっ!」
「なんでだよ!先に言ったの俺だぞっ!」
…今日も、うるさいぼっちゃんたち…
「あーもう…けんかするならお外でしなさい」
ふたりの首根っこを持って、リビングの外のお庭に放り出した。
「ああっ…酷いっ!咲ちゃん!お外寒いっ」
「いやぁっ…ちめたい!ちめたいのっ…」
足の裏をちょっとも地面につけていられなくて、タイルの上を踊るように歩いてる。
「じゃあ、静かにする?静かにしないとお家入れてあげないよ?」
ふたりの顔を見て言うと、途端にシュンとする。
「わかったぁ…もう、わかったからぁ…」
「ごめんね、咲ちゃん…だから、おうち入れてぇ…」
うなだれる二人が可愛すぎて、思わず微笑んでしまう。
「じゃあ、まーくんとさとくん。お互いにごめんして?」
「うー…」
「ううう」
ふたりは目を見合わせて、ぺこんと頭を下げあった。
「さとくんごめんね?」
「まーくんごめんね?」
ぺたぺたとお互いのほっぺを触りあって、恐る恐る私を見上げた。
「よくできました。おいで?」
そう言って腕を広げると、ふたりは飛び込んできた。