第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
「元気に帰ってきてね?」
ふたりとも俺の首根っこにぎゅうっとしがみついた。
「…わかってるよ…ちゃんとおまえたちがいい子にしてたら、ちゃあんと帰ってくるから…な?」
意外な反応に、ちょっと驚いてしまった。
こんなにしょっちゅう居ない父親なのに…
ちびたちは、それでも俺を父と慕ってくれるのか。
「今度帰ってきたら、遊園地いこうな」
「ええっ!?ほんと!?」
「ほんと!?とうちゃん!」
「ああ。3人で行こうな」
「わあ…」
死ぬほど指切りげんまんをさせられて、やっと俺は車に乗り込むことができた。
「お父さん、気をつけて」
「ああ、後、頼んだぞ」
「うん」
「じゃあな。身体、大事にしろよ?翔」
にっこり笑って、翔はコクコクと頷いた。
大野もペコリと頭を下げて、ちびたちは盛大に手を振ってくれた。
「じゃあ、車出すね」
雅紀の運転で車はあっという間に地元の駅についた。
「じゃあ、父ちゃん。帰ってくる時は連絡ちょうだいね?」
「ああ…今度はそうする」
車を降りると、雅紀も降りてきた。
「あ…」
「ん?」
「翔と大野さんのこと…ありがと」
「あ?なんでおまえが礼を言ってるんだ」